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2024.01.20
ホテル・旅館経営
【目次】
RevPARは「販売可能な客室1室あたりの収益」を表し、収益性向上を目指すホテルの経営者は、必ず把握すべき数値です。
収益性の評価や、価格設定、マーケティング活動など、ホテル運営においてRevPARが役立つ場面は数多くあります。
さらに、ADR(客室平均単価)やOCC(客室稼働率)も合わせて参考にすることで、より効果的な販売戦略を立てることができます。
本記事では、RevPARの算出方法や活用事例、ADR・OCCとの違いなどについて詳しく解説します。記事後半では、RevPARを上げるための施策例を紹介します。
RevPARは、Revenue Per Available Roomの略語で「販売可能な客室1室あたりの収益」を示す指標です。
RevPARは「客室単価と客室稼働率を掛け合わせた数値」で、RevPARが高いほど「客室料金と稼働率のバランス」が良いことを意味します。経営者は、RevPARが高くなるよう価格設定をすることで、ホテルの収益を最大化できます。
RevPARを算出することで、ホテルの収益パフォーマンスを把握でき、収益が最大となるよう価格設定をすることができます。
ホテルの収益を増やすには、大きく分けると「客室料金を上げる」と「稼働率を高める」という2通りの方法があります。
一般的に、客室料金を値上げすると客室稼働率は下がり、値下げをすると稼働率が上がります。
このように、料金と稼働率は相反する動きをする傾向があるため、どちらか一方を高めるだけでは、収益向上には繋がり難いです。
しかし、RevPARを高めることに注力すれば、客室平均単価と客室稼働率のバランスを取ることができ、収益の最大化に繋がります。
RevPARは2通りの計算式で求めることができます。
【計算式①】ADR(客室平均単価)× OCC(客室稼働率)
【計算式②】売上の合計金額÷販売可能な客室数
以下、簡単な計算例です。
<Aホテルの例>
【計算式① ADR× OCCの場合】
15,000×0.5=7,500
【計算式② 売上の合計金額÷販売可能な客室数の場合】
750,000÷100=7,500
AホテルのRevPARは、7,500円になります
以上のように、RevPARは2種類の計算式で求めることができます。
手元にあるデータに応じて、計算式を選択しましょう。
RevPARを可視化して、適切にデータを管理するためには、PMS(Property Management System/ホテル管理システム)の導入が有効です。
PMSは顧客管理、チェックイン業務、精算など、ホテルのフロント業務全般を支援するシステムです。
PMSを利用することで、RevPARが自動的に計算されるため、手計算の場合と比べ、業務効率が向上します。
さらに、新規予約受付・キャンセルの度に、自動的にRevPARが更新されるため、常に最新の数値を把握することができます。
PMSには、Check Inn、HOTEL SMART、Stayseeなど、様々な製品があります。
ここでは、ホテル経営における「RevPARの活用例」を5つ紹介します。
RevPARは、ホテルの収益性を評価する際に、欠かすことのできない数値です。
RevPARは「客室単価」と「客室稼働率」を掛け合わせた数値です。RevPARを上昇させるためには、料金と稼働率の両方をバランスよく上げる必要があります。
経営者は、RevPARの数値を見るだけで「料金と稼働率のバランスが取れているか」を一目で把握でき、収益性分析にも役立てることができます。
数値1つでホテルの収益性を把握できるので、RevPARはとても使い勝手の良い指標とも言えるでしょう。RevPARの推移からホテルの収益性分析をすることで、さらにホテルの収益を伸ばすことが可能となります。
RevPARは、料金設定の最適化にも有益な指標です。一般的に、宿泊料金を上げると稼働率が下がるため、料金設定はホテル経営者にとって非常に悩ましい業務です。
料金設定を見誤ってしまうと「料金が高すぎて、予約が入らない」とか「満室にはなったが、宿泊料金が相場より大幅に安い」というような事態に陥ります。
このような事態を引き起こさないためにも、RevPARに基づいて価格設定をすると良いでしょう。
RevPARが高くなるよう宿泊料金を調整することで、宿泊料金と稼働率のバランスも良くなり、結果として収益がアップしていきます。
RevPARは、マーケティングの再評価にも活用できます。
前述したように、RevPARを上げるためには「客室平均単価(ADR)」と「客室稼働率(OCC)」をアップさせることが重要です。
たとえば、ADRとOCCをアップするために、以下の施策をしたとしましょう。
これらの施策をした結果、RevPARが上昇すれば「マーケティング活動が成功した」と判断できます。
一般的に、ADRとOCCの数値は相反する動きをします(例:宿泊料金を値上げすると、予約数が減る)。そのため、どちらか一方の数値をマーケティングの判断基準にするのは好ましくありません。
そこで、ADOとOCCを掛け合わせた、RevPARを判断基準にすることで、マーケティング効果を、より正確に評価することが可能となります。
RevPARは、設備投資の判断基準にもなります。
既存のリソースを最大限活用しても、RevPARの向上が見られず頭打ちとなった場合は、設備投資を検討するタイミングかもしれません。
客室リニューアルや、食事会場や大浴場の新設など、設備投資はホテルの魅力向上に直結します。ホテルの設備・サービスが充実するほど、客室単価が上がりやすく、RevPARが向上します。
さらに、競合ホテルと差別化ができる設備やサービスを提供できれば、客単価と稼働率、両方の向上に繋がり、RevPARを大幅に上げることが可能です。
RevPARは、季節やイベントの影響を把握する際に役立ちます。
例えば、ホテル周辺で大規模なイベントがある場合に、イベント前後のRevPARの推移を見ることで、イベントが収益に与える影響を把握することができます。
同様に、ゴールデンウィークと通常の週末の収益の差を知りたい場合は、それぞれのRevPARを比較すれば一目瞭然です。
季節やイベントがホテルの売上に与える影響を把握することは、ホテル経営にとって大変重要です。
観光シーズンやイベントごとに「RevPARをここまで上げられる」という目安を知っておくことで、適切な価格設定が可能となり、結果的に利益の最大化に繋がります。
RevPARと同様に、ホテル運営に欠かすことのできない指標に、ADR(客室平均単価)とOCC(客室稼働率)があります。
ここでは、それぞれの指標の違いを解説します。
ADRとは、Average Daily Rate の略で「客室平均単価」を示す数値で、実際に「売れた部屋」の客室平均単価を把握する際に使用します。
ADRとRevPARの最大の違いは「売れなかった部屋」の扱いです。
ADRは「売れた部屋」の平均単価であり「売れなかった客室」は無視して計算しますが、RevPARは「空室を含めた全客室」を元に計算します。
空室も含めホテル全体の収益性を把握するためには、ADRよりも「RevPARのほうが適している」と言えます。
OCCとは、Occupancy Ratioの略で「客室稼働率」を示す指数です。
例えば、100部屋のうち50部屋が売れた場合は、OCCは50%になります。
OCCは、単純に「販売できる全客室中、何部屋売れたか」を示した数値で、宿泊料金は計算に入れません。
客室料金を含めたホテルの収益性を把握するためには、OCCにADRを掛けた「RevPAR」を利用するのが一般的です。
ADR(客室平均単価)とOCC(客室稼働率)の数値は、反比例する傾向にあるため、ADRとOCCのバランスをとるためには、RevPARの数値を常に意識することが重要です。
ここでは、「RevPARを上げる方法」を6つ紹介します。
需要を予測して柔軟に料金設定をすることで、RevPARを上げることができます。
例えば、ゴールデンウィーク、お盆休み、イベント開催時など、ホテル需要が高い時期には、料金を高めに設定します。
需要の高い時期は、ADR(客室平均単価)を上げても、OCC(客室稼働率)が落ちにくいため、RevPARを高く保つことができます。
また、値上げする際は「エリアの相場価格と離れすぎない」ように注意してください。周辺の相場価格を調査しながら、最適な価格に設定しましょう。
需要の少ないオフピーク時には、OCCを高めるため値下げをすることも必要です。値下げをする際も相場価格を調べ、適切な値下げ幅で販売しましょう。
以上のように、需要に合わせて料金を柔軟に調整することで、RevPARを上げることができます。
オフピーク時には、特別プランの販売や、特別割引を実施することで、RevPARの向上を図ることができます。
オフピークのRevPAR低下を防止することは、安定したホテル経営をするうえで、とても重要です。閑散期の予約数を増やす施策を、積極的に実施しましょう。
例えば「平日限定プラン」や「出張応援プラン」など、宿泊客の少ない平日を対象としたプロモーションを実施することで、平日のOCCを上げることができます。
また、スキーリゾートの「グリーンシーズン限定割引」のような、オフシーズン限定の特別割引も、閑散期のOCC向上に有効な施策と言えます。
以上のように、宿泊需要の少ない平日や、オフピーク限定で、お得に宿泊できるプランや割引を実施することでOCCが上がり、結果としてRevPARの向上に繋がります。
収益性が高い部屋やサービスの販売を強化することで、RevPARを上げることができます。
スイートルームや、露天風呂付き特別室など、高単価で高い収益を見込める客室がある場合は、ホームページやOTA(宿泊予約サイト)上で積極的に宣伝しましょう。
高単価客室の予約数を増やすことで、ADRが上昇し、RevPARアップに繋がります。
オフピーク時には、少ない追加料金で客室をアップグレードできるプランを販売するなど、高単価客室の空室を減らす施策も重要です。スイートルームが無いホテルは、高単価プランを作成して販売促進することで、RevPARを上げることができます。
例えば「高級料理付きプラン」や「ホテルクレジット(館内利用券)付きプラン」や「24時間滞在プラン」など、工夫次第で様々な高単価プランを作成することができます。
プラン作成自体にコストはかからないため、低リスクでRevPARアップが狙える点もメリットと言えます。様々な高単価プランの販売を試し、RevPARの向上に繋げましょう。
宿泊客のレビューをもとにサービスを改善することで、RevPARを上げることができます。
OTAのレビュー投稿機能や、Googleの口コミなどを通じて、ホテルは「お客様の声」を集めることができます。RevPARを上げるためには、「お客様の声」をもとに、継続的にサービスをブラッシュアップすることが重要です。
例えば「接客対応がイマイチ」や「清掃が不十分」など、すぐに改善可能な内容に関しては、指摘内容を全スタッフに共有して迅速に改善しましょう。
レビューの中には「内装が古い」や「エレベーターが遅い」や「ベッドが硬い」など、短期間では対応できないものも多くあります。このようなレビューは施設改修の参考にして、長期的なサービス向上に役立てましょう。
以上のように「お客様の声」に耳を傾けながら、継続的にサービスの改善を行うことで、ホテルのサービスの質は確実に向上します。
サービスの質が評価され「価格ではなく、サービスで選ばれるホテル」となれば、高価格でも予約が入りやすくなります。その結果、ADR・OCCの両方が上がり、RevPARが向上します。
ロイヤリティプログラムや会員制度も、RevPAR向上に繋がります。ロイヤリティプログラムや会員制度の主な目的は、リピーターの獲得・育成です。
定期的にホテルを利用してくれるリピーターが多いほど、OCCが安定し、長期的にRevPARを伸ばすことができます。特に、閑散期にも利用してくれるリピーターを増やすことで、年間を通してRevPARの安定化を図ることが可能です。
「会員限定割引」のような形で大幅な割引をしてしまうと、ADRの低下とともにRevPARが下がってしまう恐れがあります。
会員制度を運用する際は「割引以外の特典」を充実させると良いでしょう。たとえば、レイトチェックアウト特典、クラブラウンジ利用権、ポイント還元などがあります。
年間宿泊数に応じた特典の付与や上級会員制度も、リピート利用の促進に有効な施策です。
周辺の観光スポット、飲食店、アクティビティ事業者などと連携して、特別なプランを販売することでも、RevPARの向上を図ることができます。
たとえば「水族館チケット付きプラン」や「有名飲食店での食事付きプラン」や「スキーリフト券付きプラン」などがこれに該当します。
周辺の観光スポットと連携して、利用券などを宿泊プランに組み込むことで、高単価の宿泊プラン作りも可能です。高単価プランを販売すればADRが上がり、RevPARの向上に繋がります。
遊園地、水族館、博物館などと提携する際には、チケットの仕入れ価格を抑えることができれば、利益をさらに伸ばすことも可能です。
ガイドブックに載らないような地元で人気の居酒屋など、独自のパートナーを開拓することで、顧客に特別な体験を提供でき、お客満足度の向上や、リピーターの獲得に繋げることもできます。
RevPARの数値は「ホテルの収益性」を表しており、ホテル経営において非常に重要な指標です。
RevPARを上げるためには、収益性の高い客室の販売促進や、柔軟な料金設定などの施策を行い、ADR(客室平均単価)とOCC(客室稼働率)を上げることが必須となります。
ホテルのRevPARを常に意識し、RevPARにもとづいた販売戦略でホテルの収益最大化を目指しましょう。