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2024.04.01
ホテル・旅館経営
【目次】
ADRは「客室平均単価」を意味し、ホテル経営者が必ず確認すべき指標の1つです。
収益の推移確認や、適切な価格設定、販売戦略の策定など、ホテル運営の様々な場面でADRを活用することができます。
ホテルの利益を最大化するためには、ADRに加え、OCC(客室稼働率)やRevPAR(レヴパー)の数値も合わせて把握することが重要となります。
本記事では、ADRの役割や算出方法、OCC・RevPARとの違いを解説します。後半では、ADRの活用方法や施策例を紹介します。
ADRとは、Average Daily Rate の頭文字をとった略語で「客室平均単価」のことを指します。売れなかった客室は計算に入れず「売れたすべての客室」の平均単価がADRとなります。
Dailyという単語からわかるように、ADRは基本的に「1日単位」で算出されます。OCC・RevPARと並び、ADRはホテル経営に欠かすことのできない数値です。
ADRを算出することで、施設全体の客室単価を把握することが可能となり、適切な価格設定の目安となります。
また、ホテルの宿泊料金は、客室タイプ、食事の有無などによって異なります。予約経路(自社サイト経由の予約/OTAの種類)によって料金が変動するケースも多いです。
ADRは、客室タイプ、宿泊プラン、予約経路の違いを考慮せず、一括りで計算されるため、施設全体の客室平均単価を一目で把握することが可能となります。
このADRを、過去の数値や、競合施設の数値と比較することで、適切に価格設定を行うことができます。
繁忙期/閑散期や周辺イベントの有無などに応じて、ADRの数値をコントロールすることで、利益の最大化を図ることができます。
ADRは「売上の合計金額÷売れた客室数」で算出します。以下は簡単な計算例です。
<Aホテルの例>
(計算式)650,000÷65=10,000円
したがって、AホテルのADRは10,000円になります。
ADRは、売れ残った部屋を考慮しないため、必ず「売れた客室数」を用いて計算します。また、ADRは「1日単位」で算出されるため、計算には「1日あたり」の売上合計金額を用います。
ADRの数値を可視化するためには、PMSの導入が有効です。
PMSとは、ゲスト管理、客室管理、精算など、ホテルのフロント業務全般を支援するシステムです。
PMSを活用することで、毎日のADRが自動的に計算されるため、手動計算の手間を省き、大幅な業務効率化が実現できます。予約の受付・キャンセルの度に、数値が自動更新されるため、ADRの数値は常に最新のものに保たれます。
また、PMSにはADRのデータが自動的に蓄積されるため、過去のデータを参照することも容易になります。PMSには様々な製品があり、オールインタイプのCheck Innや、HOTEL SMART、Wincalなどが有名です
ホテル運営の重要な指標として、ADRの他に、OCCとRevPARがあります。
それぞれの指標の違いは、以下の通りです。
概要 | 計算方法 | |
---|---|---|
ADR(客室平均単価) | 売れた客室の平均価格 | 売上の合計金額÷売れた客室数 |
OCC(客室稼働率) | 販売可能な客室のうち、売れた客室の割合 | 売れた客室数÷販売可能な客室数 |
RevPAR(レヴパー) | 販売可能な客室1室あたりの収益 | (1) ADR×OCC または、(2) 売上の合計金額÷販売可能な客室数 |
OCCとは、Occupancy Ratioの略語で「客室稼働率」を指します。
例えば「100部屋中60部屋売れた」場合は、OCCは60%になります。
宿泊料金を下げることで、比較的容易にOCC(客室稼働率)を上げることが可能です。ただし、値下げをした分、ADR(客室平均単価)は低下してしまいます。
逆に、ADR(客室平均単価)アップを狙い価格を上げると、予約件数が伸びずOCC(客室稼働率)は低下してしまいます。
このように、ADRとOCCの数値は、反比例する傾向にあります。
ホテルの収益を最大化するためには、OCCとADRの両方を高水準に保てる、バランスの良い価格設定を行うことが重要となります。
RevPAR(レヴパー)とは、Revenue Per Available Roomの略語で、和訳すると「販売可能な客室1室あたりの収益」となります。
RevPARは、下記のいずれかの式で算出できます。
ADRは、売れた部屋の平均価格であり「売れなかった部屋」は無視して計算します。そのため、1泊2万の部屋50室を売り出し、売れた部屋が10室でも、満室の50室でもADRは2万円になります。
一方で、RevPARは、「空室を含めた全客室数」をもとに計算します。
例えば、1泊2万円の部屋が、50室のうち10室しか売れなかった場合、RevPARは4000円になります。
このように、空室を加味して客室の収益パフォーマンスを表しているのがRevPARです。
前述の通り、ADRと OCC(客室稼働率)の数値は反比例する傾向にあるため、どちらか一方の数値ばかりを追っていては、経営が上手くいきません。
そのため、ADRとOCCを掛け合わせた、RevPARの数値を意識することで、効果的にホテルの収益を伸ばすことができます。
ここでは、ホテル経営において「ADRを活用する方法」を5つ紹介します。
ホテルの収益の推移確認や予測をする際、ADRはとても有益な指標となります。
ADRは、客室グレード、宿泊プラン、予約経路など、異なる条件の予約を一括りに計算し、施設全体の客室単価を表します。
部屋別やプラン別の単価など、複数の数値を見る必要がなく、ADRの数値1つで施設全体の客室単価を把握できる点は、大変便利と言えます。
ホテル経営者は、ADRの推移を確認することで、ホテル全体の客室単価の増減を一目で把握することができます。また、過去の同時期のADRを検証することで、将来のおおよそのADRを予測することも可能となります。
ADRは、競合施設との比較にも有効です。
適正な価格設定をするためには、自分のホテルのADRと、競合施設の宿泊価格を比較することが必須となります。OTA(宿泊予約サイト)で競合エリア内の宿泊価格を検索することで、エリア内の相場価格がわかります。
その相場価格と、自分のホテルのADRがかけ離れないような価格設定をすることが重要となります。
そうすることで「高すぎて予約が入らない」とか「安すぎて利益が少ない」という事態を、未然に防ぐことができます。また、相場価格は、繁忙期/閑散期や平日/週末、近隣でのイベント開催などによって変動します。
上記のような市場の動向をチェックし、自分のホテルのADRを調整することも重要です。
ADRは、収益最大化の販売戦略を立てる際にも、欠かすことのできない指標です。
ホテルの収益を最大化するためには、ADRの他に、OCCとRevPARの数値を考慮して、価格設定をすることが効果的です。
宿泊施設の収益を最大化するためには「売れる最高価格で、満室にする」が、理想形です。つまり、ADRと、OCC(客室稼働率)の両方が高水準になる価格設定が、収益の最大化に繋がるのです。
ADRとOCCを掛け合わせた、RevPARが高くなるよう価格設定を行うことも非常に効果的です。
「売れる最高価格で、満室にする」を毎日クリアすることは容易でありません。しかし、ADRと他の指標を活用することで、大幅な収益向上は充分に実現可能と言えます。
ADRは、マーケティング活動を評価するための基準としても活用できます。
例えば、高グレードの客室や高価格の宿泊プランのプロモーションを行った場合、ADRの上昇が確認できれば、プロモーション効果があったと評価ができます。
反対に「客室単価より稼働率重視」で格安プランの販売促進をした場合は、ADRが下がります。
それと同時に、OCCが大幅に上昇し、結果的にRevPARも上昇すれば、一連のマーケティング活動は成功と言えます。
上記の例のように、ADRの増減は、マーケティング活動の効果を客観的に判断する、良い判断材料になるのです。
ADRは、予算策定の参考指標としても活用可能です。
過去から現在までのADRの推移は、今後のホテルの売上目標を立てる際に参考となります。さらに、過去の繁忙期などのADRは、同時期の売上を予測するために役立ちます。
また、競合施設の数ヶ月先までのADRを調べることで、おおよその相場価格を予想することができます。
以上のようなADRのデータを参考にすることで、精度の高い売上目標の設定が可能となります。
ここでは、ADRをホテル運営に活用した施策例を5つ紹介します。
ホテルの客室平均単価を示すADRは、ホテルの収益向上のために、欠かすことのできない指標です。自分のホテルのADRを把握し、競合施設の宿泊料金と比較することで、適切な価格設定が可能となります。
さらに、シーズンや周辺のイベント開催に合わせてADRを調整するなど、収益最大化の販売戦略を立てることができます。
手間のかかるADRの計算や管理は、PMSを導入することで、計算を自動化し、常に最新のデータを把握することができます。ホテルの売上アップを図る際には、ADRに基づいた販売戦略を立てましょう。