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2024.11.20
ホテル・旅館経営
【目次】
ホテル業界では、人件費など経費が圧迫していたり、人材不足が続いたりなど課題が多くあります。そんな中、新たな経営戦略としてホテルの無人化の取り組みが注目を集めています。
無人受付などホテルを無人化にすることで、人件費の削減や人材不足の課題解決の期待が大きいです。
そこで本記事では、宿泊施設での無人化が注目される理由やメリット・デメリット、さらには無人フロント運営に必要なものなどをご紹介します。
ホテルの無人フロントとは、フロントに常駐するスタッフがいない体制を指します。通常のフロント業務を自動チェックイン・チェックアウト機やタブレット端末などで代替えすることで、宿泊客はスタッフを介さずに手続きが可能です。
しかし、完全な無人化というわけではなく、少数のスタッフが別の控室で待機し、緊急時やトラブル発生時に対応できる体制を整えている場合もあります。
このようなシステムは、人手不足解消やコスト削減、宿泊客の利便性向上を目的に導入されています。
ホテル業界で無人化が注目されている背景には、人手不足の深刻化とコスト削減のニーズが挙げられます。特に人材確保が難しい中小規模のホテルでは、無人化による省力化が求められています。また、効率的な運営と宿泊客の利便性向上を図ることで、競争力を強化し、稼働率を維持するための手段としても注目です。
無人化が注目されている主な理由を3つにまとめました。
それぞれ詳しく解説していきます。
非接触対応が求められるのには、宿泊客の安心感や利便性の向上があります。対面での接触を避けたいと考える宿泊客が増加しており、無人フロントや自動チェックイン・チェックアウトを求める声が高いです。
それだけではなく、非接触による手続きは、宿泊客が自由なタイミングで手続きを進められるため、待ち時間の短縮やストレスの軽減にも繋がります。
このようなメリットが、非接触需要を押し上げ、ホテル業界で無人化が注目される要因の一つとなっています。
ホテル業界では、人手不足の課題が長い間続いています。無人化を導入することにより、人手不足の課題解消が期待されます。無人フロントにすることで、少人数でも効率的な業務の運営が可能です。
また、既存のスタッフで業務を回しやすくするだけでなく、常勤スタッフを減らすことで、人件費の削減もできます。無人化は、人材確保が難しい中でも安定した運営をさせる手段として注目されています。
無人化の導入は、ヒューマンエラーの発生を抑えることが可能です。チェックイン・チェックアウトなどの業務が機械やシステムによって自動的または半自動的に行われるため、手作業で生じがちなミスが軽減されます。
例えば、予約情報の入力ミスや金銭の取り扱いミスなどです。ヒューマンエラーの発生を抑えることで、業務の正確性が向上します。
これにより、宿泊客に対して安定したサービスを提供できるため、ホテルの信頼性向上にもつながります。
ホテル業界での無人フロントの導入は、効率化やコスト削減を目指す多くの施設で進んでいます。大手チェーンから地方の小規模ホテルまで、幅広く増加しています。
無人フロントを導入して運営している具体的なホテルの事例を4つご紹介します。
それぞれ詳しく説明します。
大手旅行代理店のH.I.S.グループのH.I.S.ホテルホールディングス株式会社が運営している「変なホテル」は、無人フロントの先駆けとなりました。
受付には人ではなくロボットが立っており、印象的な体験を提供しますが、チェックイン手続きは専用の機械を使用する形式です。また、清掃作業にはロボット掃除機を導入するなど、IT技術の活用が進められています。
このように通常はIT技術を活用し、無人化となっていますが、スタッフは常に常駐しており、緊急の際はホテルスタッフが対応を行っています。
「お客様との接触を減らしても、満足度を低下させない」という方針のもと、ゲストの高い満足度を維持しています。現在は、海外2カ所を含む21拠点で展開しており、市場からの評価は高いです。
ホテル・ザ・博多テラスは、西日本エリアを中心に無人化・省人化のホテルを運営している、株式会社リクリエが手掛ける無人ホテルです。
この施設では、300室以上ある客室にスマートロック「RemoteLOCK」を導入し、セルフチェックインシステム「Tabiq(タビック)」と併用することで、無人化や省人化の運営を実現しています。これにより、宿泊者は周囲を気にせず、快適な滞在が可能です。
また、宿泊者以外の不正な出入りを防ぐために、エレベーター制御システム「TOBIRA」を導入することで、エレベーターをオートロック化し、安全性を高めました。
一方で、フロントでのホスピタリティを重視し、特別な要望やトラブルへの対応は従来のスタッフが行う体制を維持しています。これにより、ゲストのニーズに応じた柔軟なサービスを提供しつつ、無人化の利点を最大限に活かしています。
JR東日本ホテルメッツでは、⾮対⾯で安⼼安全な新しい接遇サービスを提供しています。
具体的には、チェックインおよびチェックアウトの手続きは機械によって行います。操作での不明点があれば、遠隔地よりRemolineのスタッフがモニター越しにサポートをする仕組みです。
このような無人化により、宿泊客の待ち時間が大幅に短縮され、顧客満足度が向上しており、ホテルスタッフからも高い評価を得ています。
一方で、無人化していない部分として、フロントカウンターでは観光案内や荷物の預かりサービスを行っており、スタッフの温かい対応が残っています。
和風ゲストハウス ルームス水前寺は、熊本の観光地として有名な水前寺公園の近くに位置しており、無人運営スタイルの和風ゲストハウスです。
この施設では、エントランスに設置されたタブレットを利用してセルフチェックインが行われ、事前に送られた予約コードを入力することで、簡単にチェックイン手続きが完了します。
また、タブレット上でスマートロック『RemoteLOCK』の解除キーが提供されるため、鍵を持ち歩く必要がありません。チェックインの手順がスムーズで分かりやすく、さらには手ぶらチェックアウトができる楽さが人気です。
ホテルのフロントを無人化することは、経営面において多くの利点をもたらします。
無人化により、24時間対応が可能となり、夜間や繁忙時間帯の人員配置を効率化できます。また、業務を自動化することで、運営コストの削減や業務プロセスの見直しが容易になり、収益性の向上も可能です。
ホテルのフロントを無人化にするメリットは大きく分けて4つ挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
無人フロントの導入は、ホテル経営において人件費の削減を実現する有効な手段です。人手を減らすことで、フロントスタッフのシフト数を抑えたり、夜間の対応人員を削減したりできるため、労務コストを削減できます。
ただし、無人化には自動チェックイン機などの設備導入にかかる初期費用や、システムの維持に必要なランニングコストも発生します。それでも、長期的に考えると人件費削減によるコストのメリットが上回るケースが多いです。
人手不足に悩むホテル業界は、無人化によって、限られた人員でも効果的に運営を行えるようになります。これにより、スタッフ一人ひとりの負担が軽減され、業務過多によるストレスや疲労の緩和が可能です。
厚生労働省の業界調査によれば、離職理由は労働時間への不満が挙げられています。スタッフの負担が軽減されることにより離職率の低減につながります。
スタッフの働きやすさが向上することは、業務環境の改善だけでなく、仕事に対する満足度やモチベーションの向上にも寄与します。業務負担の軽減によって、スタッフが顧客対応や自らのスキル向上に注力できるようになると、結果として自分の仕事が評価されていると実感しやすいです。
ホテルを無人化にすることによって、フロント業務での具体的なヒューマンエラーを減らすことが可能です。
例えば、スタッフによる予約情報の入力間違いや、宿泊費用の計算ミス、また鍵の渡し間違えなどが挙げられます。こうしたミスは人の手で行う以上避けられない部分ですが、無人化されたシステムでは、事前に設定されたプログラムに基づいて処理が行われるため、ミスが大幅に減少します。
これにより、フロント業務がスムーズに進み、宿泊客への対応がより正確かつ迅速になる点で、大きなメリットと言えます。
無人フロントの導入は、従業員と宿泊客の直接的な接触を減らすことができるため、感染症対策としても効果的です。
フロント業務を自動化することで、鍵の受け渡しやチェックイン手続きといった対面でのやり取りが不要となり、接触の機会を最小限に抑えられます。
これにより、従業員と宿泊客の双方が感染症のリスクを抑えることができます。このように感染リスクを減らす取り組みとして多くのホテルで採用が進んでいます。
ホテルのフロントを無人化することは、コスト削減や業務効率化といった利点がありますが、経営面ではいくつかのデメリットも存在します。
無人化に伴う初期導入コストが高額になることや、お客様とのコミュニケーション不足です。サービス品質の低下や顧客満足度の低下につながる可能性があります。
ホテルのフロントを無人化にするデメリットは大きく分けて3つ挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
無人フロントの導入により、ホスピタリティが不足するという課題が生じます。ホスピタリティとは、接客を通じたおもてなしの心や思いやり、配慮を指し、多くのゲストがホテルに求める重要な要素です。
特に機械操作に不慣れな高齢者や外国人旅行者、または人とのコミュニケーションを重視する方にとって、無人対応は満足度を下げる要因となり得ます。
スタッフによる温かみのある対応が得られないと、ホテルへの印象や評価に悪影響を与える可能性があるため、導入には配慮が必要です。
無人フロントにするには、システム導入や機器購入に初期投資が必要です。
最新のチェックイン・チェックアウト機器やセキュリティシステムの導入には、相応の費用がかかるため、小規模なホテルには大きな負担となり得ます。
また、運用開始後も、定期的なメンテナンスやシステムアップデートの費用が発生し、故障時には専門業者による修理が必要です。これらのコストを見落とすと、想定以上の経費がかかり、結果として経営を圧迫するリスクがあります。
従来の対面対応がなくなることで、問い合わせが増加することが予想されます。
特に「機械の操作方法がわからない」「部屋を変更したい」など、イレギュラーな相談や対応を希望する場合、システム上での対応は難しくなります。
こうした問い合わせに対して、チャットボットやコールセンターなどを用意することが求められますが、24時間対応を整えるためには人員の確保が必要です。そのため、無人化のコスト削減効果を相殺する可能性もあります。
無人フロントの導入が進む中、ゲストにとっての利便性は大きな魅力となっています。無人フロントは、24時間いつでもチェックイン・チェックアウトが可能であり、長時間の待ち時間を解消することが可能です。
また、事前にオンラインで手続きが完了していれば、スムーズに客室へアクセスできるため、旅行やビジネスの忙しいスケジュールにも対応しやすくなります。
ゲストから見た無人フロントのメリットを2つ挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
無人フロントのチェックイン・チェックアウトは、従来の手続きに比べて手間が大幅に減ります。通常の手続きでは、氏名や住所などを手書きで記入する必要があり、時間がかかることも少なくありません。
一方、無人化された場合、予約情報を元に自動入力が行われるため、入力の手間が省けます。これにより、チェックイン・チェックアウトの待ち時間が短縮され、フロントで長蛇の列ができるのを防ぐことができます。
また、日本語に不慣れな外国人でも英語操作が可能であれば、スムーズな対応ができる点もメリットです。
無人フロントのもう一つのメリットは、ゲストがホテルスタッフと顔を合わせずに手続きを完了できる点です。
近年、多様な価値観が広がる中、対面接客を好まないゲストも増えています。特にプライバシーを重視する人々にとって、他人との接触を避けられるのは大きな利点です。また、著名人や公人など、知名度の高い方々がホテルを気軽に利用する際にも、無人フロントは非常に有用です。
周囲の視線を気にせず、自分のペースでチェックインやチェックアウトができるため、ストレスを感じることなく宿泊を楽しむことができます。このように、無人フロントは、さまざまなニーズに応える新しい宿泊スタイルを提供しています。
ホテル業界で無人フロントの導入を進める中で、円滑な運営には様々な機器やシステムが必要です。
まず、チェックインやチェックアウトを行うための自動精算機やタブレット端末が不可欠です。しかし、単に機器を導入するだけでは十分ではありません。業務の仕組み化やマニュアルの整備も求められます。
ホテルの無人フロント運営に必要なものを5つまとめました。
それぞれ詳しく解説していきます。
無人フロント運営に必要なものとして、自動チェックイン機器の導入が不可欠です。ゲストがフロントスタッフと直接やり取りすることなく、セルフチェックインを可能にします。
自動チェックイン機器では、予約確認、身分証明書の読み取り、支払い処理、ルームキーの発行などが一括で行えるため、スムーズかつ迅速な対応が可能です。これにより、ゲストの待ち時間を短縮し、フロントスタッフの負担を軽減することができます。
チェックインプロセスは自動化されますが、トラブル発生時や特別なリクエストへの対応には人員が求められます。したがって、適切なスタッフ数を確保しつつ、機器の導入と運用をバランスよく行うことが、無人フロント運営の成功のカギとなります。
また、自動チェックイン機は初期費用が高く、大規模の宿泊施設以外では事前チェックイン機能のあるホテル管理システムなども推奨しています。
事前チェックインに加え、Check InnなどのPMSやサイトコントローラなどオールインワンシステムも無人運営に便利なシステムとなります。
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無人フロントの運営には、鍵の受け渡し体制の整備が欠かせません。まず、自動受け渡しシステムを導入することで、ゲストが鍵を受け取る際に自動で受け渡しができます。また、少数のスタッフによる鍵の手渡しを選択する場合でも、効率的に運用することが可能です。
なお、スマートロックは、鍵を物理的に受け渡す必要がなく、スマートフォンアプリを通じてアクセスができます。これにより、セキュリティが向上し、チェックインの際の待機時間を短縮できます。
さらに、キーボックス式も有効な手段です。キーボックス式は、指定された暗証番号を入力することで鍵を受け取る仕組みで、スタッフ不在時でもゲストが鍵を取得できる便利な方法です。これらのシステムを組み合わせることで、無人フロントの利便性と安全性を高めることができます。
無人フロントの運営において、セキュリティ対策は重要です。宿泊者の安全を確保するためには、様々な対策を講じる必要があります。
まず、エレベーターのオートロック機能を導入することで、宿泊者以外の立ち入りを防ぎ、フロアごとのセキュリティを強化できます。また、監視カメラの設置や、24時間体制のモニタリングシステムも重要です。
これにより、不審者の侵入を未然に防ぎ、万が一のトラブル発生時には迅速に対応できる体制が整います。このようなセキュリティ対策を実施することで、ゲストの信頼を得ると同時に、無人フロントの運営を円滑に進めることができます。
ホテルの無人フロント運営において、出入り状況の把握は必須です。ゲストの動向を正確に把握することで、安全な運営を確保できるだけでなく、施設全体の管理にも役立ちます。
特に、防犯対策としての効果が高いのが防犯カメラの設置です。カメラは客室やロビーの出入り口に配置することで、常時モニタリングが可能となり、不審者の侵入を防ぐ手段にもなります。
さらに、出入り状況を記録することで、トラブル発生時に迅速に対応できる情報を確保でき、ゲストの安全を守るための重要な要素となります。このように、出入り状況の確認は無人フロント運営における安心・安全の基盤を支える大切な施策です。
無人フロントの運営において必要なものの最後は、緊急時対応の仕組み化です。まず、控室や待機室を設け、少数のスタッフが常に待機できる体制を整えることが重要です。これにより、宿泊者からの緊急連絡があった際に迅速に対応できるようになります。
また、フロント近くに事務所を設置することで、スタッフの即時対応が可能になり、宿泊者の安心感を高めます。 さらに、セキュリティ会社と連携することも考慮すべきです。専門のセキュリティ会社に依頼することで、万が一のトラブル発生時も安心です。
このように、緊急時の対応策をしっかりと仕組み化することで、無人フロントでも宿泊者の安全を確保し、信頼を得ることができます。
ホテルの無人化を進めるには、初期費用がかかります。初期費用には、自動チェックイン機やセキュリティシステムの導入費用が含まれますが、これだけでは終わりません。
またそれだけでなく、長期的なランニングコストも伴います。メンテナンスやシステムのアップデートなどさまざまなところで費用がかかります。
そのため、無人フロントの導入を検討する際は、初期投資の回収だけでなく、ランニングコストとのバランスを考えることが重要です。
ホテルの無人フロント運営を導入する際、初期費用は設備やシステム、施設の規模によって大きく変動します。一般的に、自動チェックイン機や精算機は、購入する場合、数百万円からの投資が必要です。
加えて、キーボックスの場合は約1万円から3万円、スマートロック式であれば1万円から5万円程度の費用が想定されます。
ただし、これらの金額はあくまで目安であり、実際の導入費用は選択する機器やシステムの種類、ホテルの規模によって異なるため、事前に十分な調査と計画が重要です。
ホテルの無人フロント運営におけるランニングコストは、導入する機器やシステムなどによって変動しますが、一般的な目安として、自動チェックイン機や精算機の維持費は月に約3万〜5万円/台程度が必要です。
また、オペレーション上複数台入れるケースが多いため、上記に対して複数台の予算確保が必要になります。
また、鍵の受け渡しに関しては、キーボックス式やスマートロック式などによってコストが異なります。キーボックス式であれば月数千円~、スマートロック式では月に1万〜3万円程度かかることがあります。
ただし、これらはあくまで目安となりますので、実際の費用は導入する機器やシステムによって変動します。そのため、導入前には十分にリサーチを行ないましょう。
無人フロントの導入は、ホテル経営においてヒューマンエラーの防止や人手不足の解消など多くのメリットがあります。さらには、人件費削減にも効果的なため、収益性の向上につながります。
また、チェックインやチェックアウトを自動化することで、繁忙期でも迅速な対応が可能となり、顧客満足度向上の期待も大きいです。
一方で初期導入のコストやシステムのメンテナンスが必要であるため、長期的な視点でのコストと効果のバランスを考慮することが重要です。フロント無人化のメリットとデメリットをしっかり踏まえたうえで、検討しましょう。