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2026.07.30
ホテル・旅館経営
【目次】

東京都の宿泊税は、2027年4月1日の宿泊分から、これまでの定額制(1人1泊100円・200円)に代わって宿泊料金の3%を課す定率制へと変わります。
ただ、宿泊事業者にとって本当に迷うのは「税額がいくらになるか」よりも、その先ではないでしょうか。改正されること自体は報道で知っていても、具体的に何が・いつ変わり、施行までに何を準備すればいいのか——東京都主税局の情報は制度・手続き・申告が別々のページに分かれていることもあり、全体像をつかみにくいのが実情です。
本記事では、改正の概要だけでなく、「施行までに何を・いつ・どの順で準備すれば良いのか」をわかりやすく解説します。

2027年4月1日の宿泊分から、東京都の宿泊税は定額制から宿泊料金の3%を課す定率制に改正されます。これに伴い、自施設が徴収・表示する税額の前提も根本から変わるため、注意が必要です。
まずは宿泊者から尋ねられたときに即答できるように、現行と改正後の違いについて、表でざっくりと把握しておきましょう。
| 1人1泊の宿泊料金(税抜) | 現行の税額 | 2027年4月1日以降の税額 |
|---|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
| 1万円以上1万3,000円未満 | 100円 | 非課税 |
| 1万3,000円以上1万5,000円未満 | 100円 | 宿泊料金×3% |
| 1万5,000円以上 | 200円 | 宿泊料金×3% |
※宿泊税は「1人1泊」ごとの素泊まり料金(食事などを含まない宿泊のみの料金)を基準に判定。判定は消費税を含まない税抜きの額に対して行う。
東京都は見直しの理由として、旅行客の増加に伴う行政需要の増大、民泊など多様な施設形態の登場、宿泊料金の上昇を挙げています。
宿泊料金が上がるなかで1泊100円・200円の定額制を続けると、高単価の宿泊でも負担は一律のままです。
そこで都は「公平性・中立性の観点から、料金に応じた負担が望ましい」として定率3%へ切り替え、あわせて低価格帯の宿泊に配慮し、非課税ラインを1万円未満から1万3,000円未満へ引き上げました。これに伴い、民泊や簡易宿所も、旅館・ホテルとの公平性の観点から新たに対象に加わります。
事業者にとっての要点は、税率だけでなく「どの施設が・どの価格帯で課税されるか」という前提そのものが変わることです。

2027年4月の改正で自施設に影響するのは、課税方式・非課税ライン・課税対象・帳簿類のルール・使途と負担軽減策という5点です。
なかでも実務への影響が大きいのは、税額の決め方が定額から定率3%に変わることと、簡易宿所・民泊が新たに課税対象へ加わることの2つで、ほかの3点はこの2つに伴う付随的な変更にあたります。
対応の具体的な手順は次章で扱うため、その前の前提知識として何がどう変わるのかをここで押さえていきましょう。
宿泊税の大きな変更点は、税額の計算方法が固定額から、宿泊料金に応じた定率制へ変わることです。税額上限はないため、宿泊料金が高いほど負担額も大きくなります。
現行制度では1人1泊あたり最大200円ですが、改正後は課税標準額に3%を掛けて算出します。たとえば、課税標準額が2万円の場合は600円、5万円の場合は1,500円です。
計算の基準となる課税標準額は、食事代などを除いた素泊まり料金の税抜額です。サービス料は含まれますが、食事や駐車場など、宿泊以外のサービスに対する料金は含まれません。また、課税標準額に100円未満の端数がある場合は、切り捨ててから3%を掛けます。
現行制度では非課税ラインが1万円未満であり、1万円以上1万3,000円未満の宿泊に100円が課されていました。改正後は非課税ラインが1万3,000円未満に上がります。
低単価プランや素泊まりプランを多く扱う施設では、これまで課税対象だったプランが非課税に切り替わるケースが出てくるため、プランごとに判定の見直しが必要です。
一方、1万3,000円以上の宿泊では、最低でも390円の宿泊税がかかることになります。現行制度よりも高くなるため、プラン料金の見直しが必要になる施設もあるでしょう。
改正後は、これまで課税対象外であった簡易宿所や民泊の宿泊者も対象者になります。具体的には、「下宿営業を除く旅館業」のほか、「住宅宿泊事業法に基づく新法民泊」と、「国家戦略特別区域法に基づく特区民泊」が対象です。
これまで宿泊税の対象外だった簡易宿所・民泊も、1人1泊の宿泊料金が1万3,000円以上であれば、宿泊者から税を徴収して東京都へ納める立場になります。
改正後は、宿泊税に関する帳簿や書類の保存ルールも変わります。帳簿の保存期間は5年から7年へ、売上伝票や領収書などの関係書類は2年から7年へ延長されます。
また、帳簿に記載すべき事項として、新たに「総宿泊料金」と「課税標準額」が加わります。
従来よりも長期間にわたり、宿泊料金と税額の計算根拠を確認できる状態にしておくことが求められます。日々の記帳と書類保存のルールを、改正後の基準に合わせて更新しておくと安心です。
改正にあわせて、宿泊税の徴収や申告に伴う事業者の負担を軽減するための仕組みも拡充されます。
具体的には、3カ月分をまとめて申告できる特例申告について、これまで設けられていた納入額の要件がなくなります。また、申告・納入に必要な様式を作成できるアプリの提供や、特別徴収義務者へ交付される交付金の上限撤廃も予定されています。
特例申告を利用できる事業者が広がるほか、書類作成や徴収事務にかかる負担の軽減が見込まれます。
改正後は、宿泊税の税収を観光振興に関する施策へ充てることが、条例上で明確に定められます。
宿泊税は、宿泊者に負担を求める一般的な税金ではなく、観光振興のための財源として徴収される目的税です。今回の改正により、徴収した税金を何に活用するのかが条例上でも明示され、宿泊税と観光施策との関係がこれまで以上にわかりやすくなります。
なお、宿泊税はこれまでも、国際都市・東京の魅力を高め、観光振興を図る施策の財源として活用されてきました。今回の改正は、使途を新たに設けるものではなく、宿泊税を充てる施策の範囲をより明確にするものです。

改正への対応は、課税対象の確認から始め、料金・システム・帳票を整えたうえで、登録や申告・納入の体制を固める流れで進めるのがおすすめです。
| 時期 | 主な対応 |
|---|---|
| 準備初期 | 課税対象となる施設・プランの確認、担当者の決定 |
| 2026年12月まで | 簡易宿所・民泊の登録申請 |
| 2027年3月まで | 計算方法、料金表示、システム、帳票の整備とテスト |
| 2027年4月以降 | 宿泊税の徴収、帳簿への記録、申告・納入 |
以降は、施行までに必要な対応を実務の順番に沿って解説します。
最初に確認するのは、自施設が宿泊税の対象となる施設か、実際に課税される宿泊プランがあるかの2点です。
まず対象となる施設は、既存のホテル・旅館のほか、簡易宿所、新法民泊、特区民泊です。
宿泊税がかかるかどうかは、1人1泊あたりの素泊まり料金の税抜額で判定します。改正後は1万3,000円未満が非課税、1万3,000円以上が課税対象です。子ども向けの個別の規定はないため、年齢ではなく宿泊料金で判断します。
通常料金だけでなく、繁忙期料金、週末料金、人数によって金額が変わるプランなども含め、実際に販売しているプランを一覧にして確認すると見落としを防ぎやすいでしょう。
課税対象となるプランを確認したら、宿泊税を計算する基準額を整理しましょう。課税標準額は、食事代などを除いた素泊まり料金の税抜額です。サービス料は含まれますが、食事、駐車場など宿泊以外のサービス料金は含まれません。
食事付きプランなど、宿泊料金とほかのサービス料金がセットになっている場合は、宿泊部分の金額を明確にしておく必要があります。
また、1室を複数人で利用する場合は、室料を宿泊者数で割り、1人1泊あたりの金額で課税を判定します。たとえば、2名で利用する部屋の素泊まり料金が税抜3万円なら、1人あたり1万5,000円となり、宿泊税は1人450円です。
次に、宿泊税を宿泊料金に含めて表示する「内税」と、宿泊料金とは別に徴収する「外税」のどちらを採用するか決めます。内税・外税について制度上の指定はなく、施設ごとに選択できます。
ただし、どちらを選ぶかによって、自社サイトやOTAに掲載する料金、予約時の案内、現地決済時の請求額、領収書の表示方法が変わります。販売経路によって表示方法が異なると、予約時に見た金額と現地での請求額が合わず、宿泊者からの問い合わせにつながりかねません。
施設内で方式を統一し、自社サイト、OTA、予約確認メール、フロントでの案内にずれが出ないようにしておきましょう。
内税・外税の方針を決めたら、PMS、自社予約システム、サイトコントローラー、OTA、会計システムなど、料金や宿泊税に関係するシステムの設定を確認します。
主な確認項目は、2027年4月1日から税率3%を適用できるか、1万3,000円未満を非課税にできるか、1人1泊単位で計算できるか、宿泊税を別項目として表示・出力できるかという点です。食事付きプランや複数人での宿泊など、自施設で扱う予約パターンにも対応できるか確認します。
自社で設定できない項目がある場合は、利用中のシステム会社やOTAへ早めに問い合わせ、改修や設定変更の時期を把握しておきましょう。
予約・会計システムなどの改修が必要な場合は、作業を始める前に、宿泊税改正関連の補助制度を確認しましょう。宿泊税の計算・集計や領収書への表示に必要なシステムの導入・改修費が、補助対象となる場合があります。
対象者や対象経費、申請期限などの最新情報は、東京観光財団の公式ページで確認してください。今後、新たな支援制度が設けられる可能性もあるため、東京都産業労働局の「補助金等の各種支援事業」もあわせて確認すると良いでしょう。
領収書や請求書は、宿泊料金と宿泊税を分け、宿泊税の名称と金額がわかる様式に整えます。
宿泊税の名称は東京都が定めており、日本語では「宿泊税」、英語では「Accommodation Tax」と表記します(出典:東京都主税局)。宿泊税を明確に区分していない場合、その金額も消費税の課税対象として扱われるため、金額だけでなく、定められた名称を記載することが重要です。
あわせて、帳簿や保存する伝票には、総宿泊料金、課税標準額、宿泊税額など、税額の計算根拠を確認できる情報を残します。複数人への分割請求を行う場合も、施設内で保存する記録には、宿泊料金・人数・泊数・宿泊税額の関係がわかるようにしておきましょう。
宿泊者から宿泊税を預かり、東京都へ納める事業者は、特別徴収義務者として登録します。既存のホテル・旅館に加えて、改正後は簡易宿所、新法民泊、特区民泊の経営者も対象です。
新たに対象となる簡易宿所・民泊の登録申請は、2026年7月1日から受け付けられていますが、東京都は年度末の申請集中を避けるため、2026年12月までの申請を推奨しています。
登録後には料金設定やシステムの整備、申告・納入の準備も必要になるため、施行直前ではなく早めに手続きを進めましょう。
登録申請は、郵送、窓口への持参、eLTAXで行えます。既存のホテル・旅館も、施設名や所在地、経営者などの登録事項に変更がある場合は、変更手続きが必要です。
なお、年間を通じて1人1泊1万3,000円以上の宿泊が発生せず、宿泊税が課されないことが確実な施設は、特別徴収義務者の登録は不要です。ただし、繁忙期の料金変更や利用人数によって課税対象となる可能性がある場合は、登録の要否をあらかじめ確認しておきましょう。
登録申請書や記載の手引は、東京都主税局の宿泊税申請様式ページから確認できます。
宿泊税は、原則として毎月末日までに前月分を申告し、納入します。滞りなく対応できるように宿泊実績の集計、申告書の作成・確認、納入を誰が担当するのかは、あらかじめ決めておきましょう。
毎月の基本的な流れは、宿泊実績を確定し、課税対象人数や課税標準額、宿泊税額を集計したうえで、申告書を作成して納入する形です。申告前には、帳簿や予約システムの記録と申告額が一致しているかも確認します。
毎月の申告が負担となる場合は、申請によって3カ月分をまとめて申告できる特例申告を利用できることがあります。通常申告と特例申告のどちらを選ぶ場合も、社内の締め日と申告期限を明確にし、期限内に確認・納入まで完了できる体制を整えておくことが重要です。
申告に必要な書類や作成の流れは、東京都主税局の申告手順解説ページでも確認できます。
宿泊税は窓口や郵送のほか、地方税の電子申告システム「eLTAX」でも申告・納入できます。eLTAXを利用する場合は、事前に利用届出を行い、利用者IDを取得しておきましょう。
税理士や運営会社に申告を依頼する場合は、代理申告に必要な利用者IDや電子証明書、委任手続きについて、依頼先と確認しておく必要があります。また、複数施設を運営している場合は、施設ごとに申告するか、合算申告を利用するかによって必要な準備が異なります。
施行後に申告作業が滞らないよう、自社で申告するのか外部へ委任するのか、どの方法を利用するのかを早めに決めておくと良いでしょう。
ここまでの準備が整ったら、施行前に実際の予約を想定して、料金表示や宿泊税の計算が正しく反映されるかを確認しておくと安心です。
確認する際は、1万3,000円未満の非課税プランと1万3,000円以上の課税プランに加え、食事付きプラン、複数人での利用、連泊など、自施設で利用の多い予約パターンを選びます。予約画面の表示額、システム上の税額、請求額、領収書の記載内容にずれがないかを、一連の流れで確認しましょう。
複数のOTAや自社予約サイトを利用している場合は、販売経路によって表示や計算に違いがないかも確認しておくと、施行後の問い合わせや現場での混乱を防ぎやすくなります。あわせて、宿泊者から税額や制度について質問された際の案内方法も、スタッフ間で共有しておきましょう。

前章で解説した基本的な準備に加えて、複数の施設を運営している場合や、東京都外に拠点を置く事業者は、個別の制度・手続きも確認しておきましょう。
複数の宿泊施設を運営している場合、宿泊税は原則として施設ごとに申告・納入します。ただし、事前に申請して承認を受ければ、複数施設分をまとめて処理する「合算申告」を利用できます。
合算申告を利用すると、施設ごとに申告する手間を減らせるほか、eLTAXでも1つの利用者IDで手続きできます。
なお、合算申告は複数の施設をまとめる制度であり、3カ月分をまとめて申告する特例申告とは別の制度です。申請期限や利用条件は施設の状況によって異なるため、利用を検討する場合は千代田都税事務所宿泊税担当(03-3525-7183)まで問い合わせることを主税局は推奨しています(出典:東京都主税局)。
東京都内に住所・居所・事務所などを持たない事業者は、宿泊税に関する申告や納税の手続きを行うため、納税管理人を定める必要があります。たとえば、都外に居住しながら、東京都内で民泊などを経営している事業者は該当する可能性があります。
東京都内に住所などを持つ人を納税管理人とする場合は、選任が必要になった日から10日以内に届け出ましょう。東京都外の人を選任する場合は、選任日の5日前までに申請し、承認を受ける必要があります。
該当する事業者は、特別徴収義務者の登録とあわせて、納税管理人の選任・届出を進めましょう。
東京都の宿泊税改正について、施行時期や課税の判定、宿泊事業者の申告実務など、迷いやすい点に回答しました。
A. 2027年(令和9年)4月1日の宿泊分からです。
2027年3月31日までの宿泊には、現行の定額制が適用されます。
A. 施設自身による割引は割引後の金額、第三者から補助を受ける場合は補助額を含めた金額で判定します。
会員割引や一般割引、株主優待など、宿泊施設が自ら料金を値引きした場合は、値引き後の宿泊料金が基準です。一方、自治体など第三者が補助金・助成金を負担する場合は、宿泊者の支払額と第三者の負担額を合算して判定します。
A. 実際に宿泊したかどうかではなく、施設と利用者との契約上「宿泊」として扱うかによって判断します。
デイユースや会議室利用など、契約上宿泊として扱っていない利用は宿泊税の対象になりません。キャンセル料を違約金として扱う場合も、宿泊には該当しません。
一方、実際に宿泊していなくても、契約上は宿泊として客室を提供している場合は、課税対象となる可能性があります。
A. 連泊や複数人であっても、宿泊税は「1人1泊」ごとに計算します。
複数人で1室を利用する場合は、1泊分の室料を宿泊者数で割り、1人あたりの宿泊料金が1万3,000円以上になるかを判定します。連泊の場合も泊数分をまとめて判定するのではなく、各宿泊日の料金をもとに1泊ずつ計算します。
日によって料金が異なる場合は、課税・非課税の判定も宿泊日ごとに変わる可能性があります。
A. 子どもであっても、1人1泊の宿泊料金が1万3,000円以上であれば課税されます。
宿泊税には、年齢を理由とした個別の規定はありません。大人・子どもの区分ではなく、それぞれに設定された素泊まり料金の税抜額をもとに判定します。
A. 修学旅行を対象とした個別の免除規定はありません。 一般の宿泊と同様に、1人1泊の宿泊料金で判定します。
ただし、東京都主税局は、非課税ライン(1万3,000円未満)の引き上げに伴い、都が実施したアンケートで7割以上の修学旅行生向け料金が課税免除となる見込みだと示しています(出典:東京都主税局)。
A. 特別徴収義務者として登録している場合は、納入額が0円でも申告書を提出する必要があります。
申告がないと、課税対象となる宿泊がなかったのか、申告が遅れているのかを東京都側で確認できないためです。
料金の値下げなどにより、今後も宿泊税が発生する見込みがなくなった場合は、登録の解除を申し出ることができます。解除について詳しくは、東京都主税局に問い合わせください。

東京都の宿泊税は、2027年4月1日から定率3%へ変更され、非課税ラインの引き上げや、簡易宿所・民泊への課税対象拡大も行われます。
宿泊事業者は、自施設の課税対象を確認したうえで、料金表示やシステム、帳票、登録、申告・納入の運用を順に整える必要があります。直前に対応が集中しないよう、必要な改修や手続きから計画的に進めましょう。
宿泊税対応を含め、予約・売上・帳票などの管理体制を見直す際は、宿泊施設向けシステム「Check Inn」の資料やデモもぜひご確認ください。