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2024.03.01

ホテル・旅館経営

レベニューマネジメントとは?ホテルの売上アップ施策の手順や事例を紹介

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ホテル経営における宿泊予約の売れ残りは、利益減少に直結する重要な問題です。しかし、稼働率を上げるために安易に値引きを行うと、逆に売上が低下するリスクがあります。

ホテル業界では、宿泊料金の適正化を図るために「レベニューマネジメント」という手法が採用されており、これは利益最大化に不可欠な戦略の一つです。

この記事では、レベニューマネジメントの概念、実践手順、および具体的な取り組み事例を詳しく解説します。

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レベニューマネジメント(Revenue Management)とは

レベニューマネジメント(Revenue Management)とは

レベニューマネジメント(Revenue Management)とは、過去の販売実績・データから予測を立てて、予約の販売価格をコントロールする手法です。

この手法が最初に取り入れられたのは航空業界で、1980年代にアメリカン航空が「レベルマネジメント」を活用した予約システムを確立しました。その後、様々なサービス業界にもこの手法が取り入れられ、ホテル業界でも積極的に活用されています。

ホテルの中には、宿泊予約だけでなく、レストラン、会議場、宴会場など、保有する全ての施設を活用しながら収益率を高める手段として、トータル・レベニューマネジメントが展開されています。

レベニューマネジメントによる収益増加の仕組み

宿泊料金を一律に設定した場合、以下のように2つの「機会損失」が発生します。

  • 空室を安くして販売すれば、もっと売れたのではないか
  • 予約客に対してもっと高い料金で販売できたのではないか

このような機会損失を無くすためには、過去の販売データや顧客データを細かく分析して、柔軟に価格設定をする必要があります。

たとえば、早期予約の割引額、早期予約の適用日数、予約に割り当てる部屋数、前日や当日予約の価格などを決めるには、まずデータに基づいて需要予測をすることがポイントです。

また、早期予約割引を適用して全室を販売してしまうと利益率が上がりませんし、当日や前日予約の部屋を確保しすぎると空室が多くなり、かえって売上が落ちてしまう恐れがあります。

ホテルの収益性を限界まで高めるには、データから予測して「予約受け入れ数」や「販売価格」をコントロールする必要があります。

イールドマネジメントとレベニューマネジメントの違い

ホテル業界では、レベニューマネジメントと同じ意味でイールドマネジメントという言葉を使うことがあります。基本的には、イールドマネジメントもレベニューマネジメントも同義として解釈して問題にはなりません。

レベニューマネジメントとダイナミックプライシングの違い

レベニューマネジメントが需要を予測した価格設定であるのに対し、ダイナミックプライシングとは「販売開始後の予約状況」を見ながら価格変更をすることです。

レベニューマネジメントとダイナミックプライシングの両者を併用することで、空室をできる限り無くして、利益を最大化することができます。

具体的には、これまでに蓄積した販売実績データや顧客情報、競合ホテルとの比較、地域のイベント開催、天候などをもとに、宿泊需要の予測を立てて初期価格を設定します。

その後、販売を開始してから予約状況などを見て、設定した価格を柔軟に変更していきます。

このように「販売前の価格設定」と「販売後の価格変更」の両方を実施することで、ホテルの収益性をより高めることが可能です。

レベニューマネジメント導入のメリット

レベニューマネジメント導入のメリット

ホテルにレベニューマネジメントを導入することで、様々なメリットが得られます。以下は、代表的なメリットです。

  • 売上予測が立てやすい
  • 客室単価を最適化できる
  • 売上の機会損失を減らせる
  • 経費削減に繋がる
  • 利益率を上げられる

過去の販売実績、顧客情報をはじめとした様々なデータから需要予測をするため、ホテルの売上についてもある程度の予測が可能になります。

レベニューマネジメントでは、需要予測に基づいて価格設定をしますから、予約時期に応じて最適な価格を設定することも可能です。適正価格を設定することで「売れ残り」を限りなく減らすことができます。

また、需要予測に合わせてスタッフの人数や配置を調整したり、食材の仕入れを調整したりできるため、人件費やその他の経費削減にも大きく貢献します。

レベニューマネジメントを導入することで、売上の最大化や経費削減が可能になるため、結果として利益率も上がっていきます。

レベニューマネジメント導入のデメリット

レベニューマネジメント導入のデメリット

ホテル経営に役立つレベニューマネジメントですが、いくつかデメリットもあります。以下は代表的なデメリットです。

  • 時間や手間がかかる(人的作業の場合)
  • データとなる情報収集が必要である

レベニューマネジメントの実施には、多種類のデータ検証、周辺地域の情報収集、需要予測と価格設定など、やるべきことが多いのも事実です。これらすべてを人的に行うとなると、非常に手間や労力がかかります。

人手不足のホテルなどは、レベニューマネジメントを導入したくても、業務負担が増えることを懸念して二の足を踏むかもしれません。

しかし、データ分析やレベニューマネジメントができるシステムを導入することで、人的作業を減らしながらマネジメントできることはもちろん、正確な需要予測もできるようになるでしょう。

レベニューマネジメントの実践手順について

レベニューマネジメントの実践手順について

レベニューマネジメントは即効性を感じられる施策というより、以下の手順を繰り返すことで精度を上げながら効果を大きくしていく施策です。

  • 需要を予測する
  • 販売方法を決定する
  • 効果検証と改善策

これらの手順について、ここから解説します。

需要を予測する

レベニューマネジメントを始めるにあたって、まずは取り組むことは需要の予測です。需要予測をするためには、自ホテルに求められていること差別化できているポイントなどを、あらかじめ知っておく必要があります。

そのために、以下の3つのことを実施しましょう。

  • 過去の実績・顧客情報を調査する
  • ホテルの周辺情報を把握しておく
  • 競合しているホテルを調査をする

過去の販売実績を調べることで、ある程度の需要予測は可能です。加えて、顧客情報(年齢・性別・宿泊目的など)・口コミ・お客様の声なども分析することで、より精度の高い予測をすることができます。

しかし、自ホテルの過去データや顧客情報だけでは、宿泊客のニーズに応えられるとは限りません。近隣に競合ホテルがオープンした、近隣のホテルが値下げした、といったことがあれば、競合ホテルの情報をリサーチしておくことも重要です。

また、ホテル周辺のイベント情報、季節イベントの時期、天候など、より細かい情報についても調査することで、需要の予測はより完璧なものになるでしょう。

販売戦略を立てて販売をする

需要の予測ができたら、次に販売戦略を立てます。このときに大切なことは「収益目標」を決め、収益を最大化させるための戦略を立てることです。

  • 早期割引の期間をどれくらいにするか
  • 早期割引に割り当てる部屋数をいくつにするか
  • 予約販売の上限価格をいくらにするか
  • 何日ごとに価格を上げていくか

これらのことを決めてから、実際に予約販売を開始します。

また、販売に合わせてキャンペーンを打ち出したり、広告を出稿したり、SNSに投稿したりなど、目標達成に向けての取り組みも検討しましょう。

結果を検証して改善策を見つける

レベニューマネジメントの手法で予約販売をした後、その効果を計測して検証することは、非常に重要な作業です。効果測定・検証の作業をしなければ、レベニューマネジメントの十分な成果は得られません。

まずは、目標の収益額と、実際の収益額を比較して、その差額の原因を考えます。目標額を上回っていたとしても、原因を探すようにしましょう。なぜなら、需要予測とズレが生じていることに変わりはないからです。

また、測定する項目を増やすことによって、多角的な視点で事実を捉えることができるようになり、より原因を突き止めやすくなります。様々なデータを蓄積して分析するときは、ホテル管理システムを利用すると非常に効率的です。

ホテル管理システムを活用することで、データ収集や分析にかかる人的作業を大幅に減らせますし、需要予測の精度も上がります。

さらに、需要予測、販売、効果測定・検証を繰り返して実行することで、適正な販売価格を設定することができるようになるでしょう。

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レベニューマネジメントの注意点

レベニューマネジメントの注意点

レベニューマネジメントを導入する際は、以下の2点について注意しておきましょう。どちらも「ユーザーの信頼を損ねる」可能性があるからです。

  • 販売価格の不公平感
  • オーバーブッキング

レベニューマネジメントでは、予約するタイミングによって価格が変わります。

予約日が1日しか変わらないのに価格が数千円も違うことや、閑散期に比べると繁忙期では価格が上がることは、レベニューマネジメントでは当たり前のことです。

しかし、これを知った顧客が不公平感を訴えるかもしれません。かといって料金設定を一律にしてしまうと、ホテルの利益を最大化できなくなります。

料金が変動することを、わかりやすい位置に表示しておくなど、ホテル側が工夫をすると良いでしょう。

また、レベニューマネジメントのテクニックの1つとして、予約キャンセルを見越した「オーバーブッキング戦略」があります。

実際にオーバーブッキングが起きてしまうと予約を断らざるを得なくなるため、大きく信頼を損ねることになります。

オーバーブッキング戦略を使うときは、高い予測精度が求められます。レベニューマネジメント導入初期には、オーバーブッキング戦略の活用に十分注意しましょう。

レベニューマネジメントの実践事例

レベニューマネジメントの実践事例

レベニューマネジメントを取り入れた企業の事例を、3つ紹介します。

  • アパホテル
  • 株式会社パルマ
  • 横浜DeNAベイスターズ

ここでは、ホテル業界以外の事例も取り上げています。

アパホテル

アパホテルでは、価格設定を全国一律にするのではなく「店舗ごとの価格設定」を採用しており、地域の特性やニーズに合わせて宿泊価格を調整しています。

各店舗がレベニューマネジメントをすることによって、大きな利益を生み出していることでも有名です。

また、アパホテルはレベニューマネジメント研修を通じて、経営的判断ができる支配人を育てるとともに、需要予測やルームコントロールの実践ノウハウも提供しています。

【出典】アパホテル「加盟条件と開業までの流れ」

株式会社パルマ

セルフストレージ事業を展開する株式会社パルマでは、トランクルームの賃料設定にレベニューマネジメントを取り入れています。

トランクルームの収益モデルはサブスクリプションサービスに近く、一度契約すると他社に乗り換えることが少なく、長期契約になりやすいことが特徴です。

低稼働時には、新規顧客に対して低価格でトランクルームを割り当て、契約更新の際に値上げをして収益性を高めています。一方、高稼働時には、収益性を高めるために、新規顧客に対する販売価格を高く設定しています。

需要予測しながら柔軟な価格設定をすることで、収益の最大化を狙うことができています。

【出典】青木章通「ビジネスモデル構築におけるレベニューマネジメントの役割」

横浜 DeNA ベイスターズ

横浜DeNAベイスターズでは、2018年度からスタジアム観戦チケットに「変動価格制度(フレックスプライス制)」を導入しました。

顧客のニーズを細かく把握し、300円刻みの5段階価格をチケットに反映させることで、顧客満足度の向上とスタジアム稼働率の最適化を図っています。

低稼働日にはリピーターを中心に基本的な稼働を確保し、稼働が高い日には「球場での消費単価が高い」新規顧客を誘導することで、売上の機会損失を減らしています。

【出典】青木章通「ビジネスモデル構築におけるレベニューマネジメントの役割」

ホテル経営にレベニューマネジメントは必須(まとめ)

ホテルの経営・運営において、宿泊部屋の売れ残り、過度な安売りといったことは、売上や利益の機会損失になります。

各種データや実績をもとに、適切な販売価格を設定して価格をコントロールすることができれば、ホテルの利益を最大化することが可能です。

現在、レベニューマネジメントによる売上拡大の手法は、ホテル経営には欠かせないものとなっています。

販売戦略の一環として「レベニューマネジメント」を導入し、ホテルの収益を拡大していきましょう。

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